毎朝8時40分に家を出て、帰ってくるのは大抵21時頃。
歯科医院って拘束時間が長いですよね・・・と思うのは私だけか、わたなべ歯科だからか。もちろん早く帰る努力もしておりますが、それでも1日の大半を診療室で過ごすことに変わりはありません。毎日向かう診療室。その中での患者さんとのやり取り、院長とのやり取り、スタッフとのやり取りが、私の元気と健康、モチベーション維持の源です。落ち込む源でもありますが・・・。
そんな毎日を楽しく過ごす工夫をしています。どんなに忙しくても、やることが沢山たまっていても、患者さんのことで悩んでいても、院長のことで困っていても、お会いする患者さんの前では心からの笑顔でいたいですから。笑顔を見ることなくお帰りになってしまうと、とても寂しい気が致します。心の健康維持のために、毎日の診療を楽しむために、私がここ最近起こした行動について、2点ご紹介致します。
まずは、医院をキレイに保つこと。これは私の今月の目標でもあります(毎月目標をたてているのです)。そして、何でも楽しんでやろう!と言うのが私のモットー。最初に取り組んだのは主に院長が使用している棚の中、上、周囲でした。当院の院長はとっても勉強熱心なのです。その点はものすごく尊敬できます。でも参加したセミナーの案内、資料、書いたメモ、参加証、ネットから印刷した様々な情報、etc.を山済みにして置いておく癖があるのです。いつかまた参考にする時があるかもしれないから、と。わたなべ歯科に勤務して6年。そんな時はほとんど無い事を私は知っています。そしてまれに訪れたそんな時に、ない!と言って資料の山を書き分け、発掘に失敗する先生のお姿も拝見しているのです。診療の空き時間を見つけては、捨てましたよ。要らないものを洗いざらい。とてもすっきりした気分になったのは、一番乱雑としていた場所がキレイになったからなのか、捨てられて行くものたちを見て悲しい顔をする院長の姿を見られたからなのか。毎日過ごす診療室がキレイになると、心が軽くなって、改めて頑張ろう!と言う気持ちになれるものです。皆様もぜひお試し下さい。ただし、院長のものを捨てるときは、要不要をちゃんと確認することをお勧め致します。先生がゴミ箱の前に座り込むことの無いように・・・。
そしてもう1点。それはパワーヨガです。上述した“笑顔”がだんだん、まぁるくまぁるくなって、患者さんに一層の安心感をお届けしていた私。かるくヤバイ?と言うフレーズが妙に頭に残るようになって、ついに始めました。静止時間が長く瞑想的要素が特徴のアイアンヨガと、呼吸と動作をシンクロさせたアシュタンガヨガを組み合わせ、筋トレ的要素を取り入れたのがパワーヨガです。やってみると、けっこうツライ。腕もプルプル、足もプルプル。でも痩せました。久しぶりにお会いした先生や衛生士さんに、痩せた?と言われ、メインテナンスにいらした患者さんにも痩せた?と言われ、にんまりする私。しばらくは帰宅後に行なっていたのですが、疲れて寝てしまうことや雑事に追われて忘れてしまうこともありましたので、医院でもやってみました。初めてなのに私より長くポーズをとっていられる後輩の衛生士の姿を見て、若さに負けた、と実感。驚くほど体の硬い院長。
わたなべ歯科のヨガ熱は始まったばかりです。
毎日の診療室では笑顔で楽しく過ごしたい。それは楽しくなかった時期があるから強く思うようになったことです。追われるように仕事をして、クタクタになって、不満もいっぱい、悩みもいっぱい。患者さんの前では笑っていても、余裕のない笑顔に患者さんが惹きつけられるはずもありません。それでも衛生士を辞めずになんとか前に進んで来て、様々な人に出会い、本に出会い、場に出会い、やっといろんな事を楽しめる余裕ができました。これまでずっと頑張って来られたのは、悩み、落ち込み、嫌になりながらも歩くのを辞めなかったからだと思います。一度止まってしまうと歩けない。なんとなくそんな気がして、何とか歩き続けてきました。足取りがだいぶ軽くなった今は、誰かの背中を押すこともできそうです。
もし私に会うことがありましたら、痩せた?の一言をお忘れなく!
知人に紹介されて、久しぶりに美容院を変えてみました。満足げに鏡で自分を眺め、外出先ではショーウィンドウに映る自分をチェックし、写真を撮れば自分の映り具合しか見ていないその知人が良いと言うのだから行ってみよう、と思いました。口コミって大切。
片田舎の決して交通の便の良くないその美容院は、おしゃれな外観にセンスの良い落ち着いた店内。まぁこれは美容院としての最低ラインかも知れません。電話で予約を入れておいた私が店内に入ると、長山様ですね、お待ちしておりました、と笑顔で挨拶。むむ、できるな。と感じる私。この辺りから“吸収モード”に入りました。高級そうなソファに沈みながら問診表のようなものを書く。書き終わると大塚愛似の美容師さんがすかさず取りにいらして、少々待たされる視界には各コースの案内やお勧めヘアケア製品が入ってくる。
で、担当して下さるイケメン美容師さんの自己紹介。おそらく喫煙者であろう口元が残念。しかし知人を担当されている方と知り、とびきりの笑顔にこちらもつられて笑顔に。私たちの心がける担当制に通ずるところがある。で、キメ細かい問診。どうなりたいのか?自分で感じている髪質はどうなのか?等ヒザをついて聞いて下さる。
傾聴、共感の心バッチリ。そして、一通り希望が確認されて通された椅子には名前入りのメッセージカードが置いてあるではないですか。そこに書かれているのが自分の名前だと言う事に、しばらく気づきませんでした。さらにどのスタッフの方に代わっても名前で声をかけていただけて、つかの間のお嬢様(女王様?)タイムを味わえました。最後にはホームケアや次回の来店目安などの処方箋が頂けて、ここにも歯科のメインテナンスに似通うところ発見。
スタッフも、お客さんも、その空間内にいる全ての方が笑顔でいられる、素敵なところでした。最後の最後まで、禁煙を啓蒙すべきかどうか迷ったのですが・・・それは今後信頼関係ができてからのお楽しみにすることにしました。(何の信頼関係か、それは不明ですが)。
よく歯科医院のメインテナンスも、美容院に行くのと同じ様にと形容されることがあります。PMTCされることが大好きで、いつでも誰のでも練習台になる準備万端の、他の医院を見学に行ってはアポイントを取ってもらいメインテナンスを受けているような私にとっては、そこに何の違和感も嫌悪感もありません。しかし一部の方にとっては、歯科と美容院の差は埋めがたいものがあるようです。残念ながら。もちろん根本的な目的は違うのでしょうけれども。
以前わたなべ歯科に来院されたHさんは、とにかく歯科が苦手でした。Hさんの全身からは“怖い、早く帰りたい”オーラが出ていて、いつもうつむきがちなその目には、医院の雰囲気の良し悪しなど映っていない様子。歯科医院にいることをじっと耐えてらして、治療が終わると逃げるように帰っていかれる。どうなりたいか?はできるだけ歯科通院しなくて済むようにと、プラークコントロール良好。マイナスのモチベーションばっちり。
残念ながら、私は彼女の笑顔を一度も見ることなく、治療が終了、来院が途絶えてしまいました。当時の私には、彼女のどうなりたいか?を痛みをとりたい、歯科通院を早く終わらせたい、以上のものを引き出すことができませんでした。考えようによっては、う窩が塞がり、プラークコントロール良好、それで良いじゃない、と思うこともできます。
でも彼女の口腔内にはそれでも虫歯ができたのです。何年かに1度の歯科治療に耐えながら、彼女は歯を失って行くのでしょうか。ただメインテナンスに来院してさえいればう窩ができない訳ではないでしょうが、怖いから、痛いから、虫歯になりたくない、と言うHさんに、メインテナンスを通して虫歯さえできなければ怖くて痛い治療も受けなくて済む
し、それ以上の喜びがあると気づいていただきたかった。
美味しいものを美味しく食べられる、見た目の若々しさ、彼女にとっての喜びが何なのか、教えていただける心のつながりを作りたかった。Hさんへの後悔から、様々な関わり方を学び、成長してこられた私。またHさんにお会いすることができたなら、今度こそ恩返しができるかも、とチャンスを待っております。
心のつながり、について、先日とても楽しく刺激的なワークショップを体験してきました。
ケアリングクラウン、をご存知でしょうか?ご存知ない方、ぜひネット等で調べてみて下さい。新しい自分に気づく入り口に立てるかもしれません。皆で、笑うのです。そして泣いて怒るのです。参加者20数名が共に泣き、笑うその姿は、端から見れば滑稽でしょう。でも、そんな風に客観的に考えてはいけないのです。感情を開放して演じることで生まれて
くる感動があるのです。マスクをつければ私ってキャッツの一員?と思えるほどの場の心地良さ。一体感。“笑い”を届けて気持ちのケアをするのがクラウンかと思っていましたが、それは大きな誤りでした。クラウンの仕事の真髄は人に喜びと愛を与え、同時に自分自身も喜びと愛を受け取ること。その奥深さを知ると共に、実際に体験したワークショップのユニークさに感激しました。
笑って、泣いて、優しさに触れあい、自分自身の未成熟な部分に気づき向き合うことができました。楽しいばかりではなく、悲しい側面も合わせ持つクラウンは、患者さんと人間同士としてつながるプロです。私は普段どれだけ“ケア”と言う実感を持って診療しているだろうか、と帰路に着く電車の中で考えさせられました。そのワークショップで知り合った他職種の方から届いたメールが印象的です。
“あなたは普段ケアの役割は何をされている方ですか?”
Tさんの入れ歯は、裏山から発見されました。Tさんが亡くなられたのは夏の暑い日。入れ歯が発見されたのはそれから数ヵ月後の、秋のことでした。
Tさんの異変にご家族が気づいたのは、さかのぼる事約1年。同じ敷地内にある別の家に住んでいたTさんとご家族は、もともと食事は別。なにしろTさんは朝食も夕食も5時。元気な80代の女性でした。それでもお散歩や庭仕事に出てくるTさんがずっと入れ歯を入れていないことに家族が気づくのに、そう時間はかかりませんでした。
歯医者さんに行こう。と言う家族の言葉に、Tさんがうなずくことはありませんでした。
一番近い歯医者さんまで車で30分。Tさんは車が大嫌い。もう何十年も、乗ったことがありませんでした。食べられるから、と言うTさんの言葉を疑ったご家族は、もちろん食事を見に行きました。そこで、大好きなお刺身やお漬物を、美味しそうに食べているTさんを目の当たりにして、何も言わなくなりました。
しかしそれから間もなくして、Tさんの言動に少しずつ変化が出てきたのです。毎日会う孫の年齢を間違える。息子の名前を忘れる。何人分もの食事の支度をする。泊まりに来る予定のない親戚の布団を用意する。Tさんの認知症は急速に進行していきました。
足腰の丈夫だったTさんですが、家の中や周囲で行方不明になることはあっても、家から離れることはありませんでした。そして家族の名前を忘れても、自分で食べる食事は自分で用意していました。“お客様”の分も常に用意して。夏の暑い日、最期に冷たいアイスクリームを食べ、Tさんは永眠しました。
そんなTさんは、私の曾祖母です。入れ歯をなくしてからの曾祖母の変わり様に、高校生だった私は歯科衛生士へのきっかけを与えられました。何ができるかわからないまま、私は歯科衛生士の道を歩み始めました。
Sさんは、義歯を使わない方でした。食事をする時には義歯を外し、外出する時に義歯を入れます。Sさんは、昔気質
の頑固で厳しい、おしゃれな男性でした。地位の高いお仕事をされていたSさんは、人前で話したり人を叱咤したりする
時に、義歯が落ちてしまうことを気にされて、何度も歯科医院に足を運びました。そしてやっと落ちない義歯が完成した
のですが、それでも食べる時には義歯を外したほうが、具合が良かったようです。落ちないけれど噛めない、無い方が何
でも食べられる、とSさんはこぼしていました。
そんなSさんは、私の祖父です。今月の頭に亡くなりました。昨年癌を宣告され、自宅療養を続けていました。食べる事が好きな人でしたから、お酒を我慢する分、好きなものを食べ、お医者様から宣告された余命より、ほんの数ヶ月、長生きしました。私が思い出す祖父の笑顔は、上顎の前歯3本が欠けています。厳格な祖父でしたが、記憶に残るのは笑顔の優
しい人でした。亡くなった時、沢山の方に見送られるからと、義歯をはめました。冷たく硬くなっていく口腔内に触れながら、もっと何かできたのでは、と後悔の気持ちが押し寄せてきました。歯科衛生士になって7年目。初心を思い出し、私にできること、を模索中です。
4月、いろんな事がありました。企画・運営に携わった歯科衛生士シンポジウム。祖父の死。保険点数改定。患者さんとの関係にも変化が訪れました。保険→自費へと移行する中での、さまざまな患者さんからの言葉が印象的です。変化を告げる中で、思いのほか患者さん方が様々な本音を語って下さいます。いくらになっても来るから、とおっしゃって下さる方。その分ホームケアを頑張るから、と本来の目的に気づかれる方。値下げ交渉をされる方。いつもとって帰られたご予約を電話するから、と早々に立ち去る方。こちらが予想していたその方の意識と異なる本音もちらほら。
今回の改定が無かったら、聞けなかったような言葉を沢山いただきました。正直、改定には不満も不安もありますが、今の私にできること、これからの私にできることを考え、目の前の患者さん方を大切に、毎日の診療を大切に、これからも頑張りたいと思います。曾祖母や祖父が、私に考えさせてくれたことを大切に、患者さんの口腔内を通し、その方の健康に貢献できる歯科衛生士目指して、邁進していきます。
5月。GWは実家での農作業、景山正登先生セミナー、月一回の勉強会が二つ、院長に騙されて規定よりも多く書いた原稿の締め切り、先輩衛生士さんの結婚披露パーティ、フォーラム東京スタッフミーティングへの参加、となかなか時間をフル活用した一ヵ月でした。
でもですね、“終わってる”と言われたんですよ。例のイケメン喫煙者美容師さんに。
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コラム2回目参照
彼の営業トークに乗せられて、今月は2回も行ってしまった美容院。そこで終わってる、とはあんまりじゃないですか。
そもそも、結婚披露パーティに参加するためにセットしに行った時、切ってもらいたかった前髪を、今日は長い前髪を流した方が似合う、と言われ、そのままにし、改めてカットしに行ったんですよ、私は。 知人にも友人にも話した私。人に話すことで自己客観視できてきました。
確かに言われてみれば、“終わってた”かも、この一ヵ月。医院から帰るのも遅くなりがち、帰宅したらパソコンとにらめっこ。考えてみればゆっくり夕食、なんてとっていない。時間が無いのでお風呂もシャワーのみ。気づいてみれば体重は変わらないのに体脂肪が増えている。“ダメ女”じゃないですか。しかも、いつもより沢山の方々に接する機会が多かったのに、まるで吸収できていない。今思えばもったいない!!と感じることが多いではないですか。
フッと、ある患者さんのことを思い出しました。今もメインテナンスに来てくださるその方は、私が1年目の時から担当させていただいた50代の女性です。
その頃私は、いろんなことをとにかく頑張ろう!と無我夢中の時期でした。開業したばかりで理想に燃える院長と、ベテランでパワフルな先輩衛生士。毎日の仕事を覚え、足りない知識と技術をなんとか補おう、と本を読んだり練習したり、セミナーに参加したり。
そんな時、その女性が“頑張っているのね”と、急に口にされました。その当時は深く考えもせず、“ここは先生も先輩もとても熱心ですから”と答えました。するとその方から、“でもね、頑張る度合いは人それぞれ。人に合わせて頑張らなくて良いのよ。”と思いもかけない言葉が返ってきました。
今思えば、診療でしか接していないはずの彼女が、何のことを指して言ったのか、よほど必死に一生懸命にやっているように見えたのか。でもその言葉を聞いて、急に肩の力が抜けて言ったのを覚えています。無理せず自分なりにできることを頑張れば良いんだ、と。疲れた時、行き詰った時、彼女の言葉にどれだけ励まされたことか。
その女性に、今でもとても感謝しています。そう思うと、患者さんに、先生方に、先輩や後輩衛生士に、とにかく私と接して下さるいろんな方に、見守られ、支えられ、育てられてきた私。
改めていろいろあった今月のイベントを振り返ってみると、沢山の“感謝”しなければならない現場に遭遇していた私。自分自身の感謝の形、とは別の、多くの方の感謝の形も目の当たりにしていることに後になって気づきました。
だんだんと仕事に慣れ、それなりに忙しくなり、やらなければいけないことが増え、“人に感謝する”心がなくなっていたのかも知れません。気づいてみれば、私は今月何のために忙しかったのか?セミナーに参加して?原稿を書いて?スライドを作成して?で、そこから何を得たのか?何のためにそれらを頑張ったのか?
ただ単に忙しい毎日を過ごしていたのでは、そこから得られるものは何もありませんよね。 セミナーに参加すること、原稿を書くこと、スライドを作ること、が目標になってしまったのでは、本末転倒。何にも成長しませんよね。
そう言えば昔読んだ本に書いてありました。“不満を感じる時は人に感謝する心を忘れている”。いろんな面で、それを痛感した一ヵ月でした。