来院される方の多くは、自分の歯を抜きたくないと思っています。「喪失感」を味わいたくないと思っていらっしゃるのかもしれません。事実、グラグラで噛めない状態なのに、抜くのはイヤだという方はとても多いのです。
そんなとき、本当はどうなりたいのか。私たち医療者が思う理想と、患者さまが思う理想は違うかもしれません。ぜひ、ご相談ください。
良いこと悪いことの知識
ある患者さまが「なぜこれほどむし歯になりやすいのだろう」と気にされていました。いろいろお話を聴いていくうちに、健康のためにお酢を欠かさず飲んでいることがわかりました。ところが、問題はその量。1日中、チビリチビリと飲んでいたのです。
もちろんその方は、過ぎた量のお酢が歯を溶かしてしまうことなど知るはずもなく、ただ身体に良いと思って飲んでいたとのこと。じっくりお話を伺わなかったら気付かなかったかもしれません。身体に良いと思って摂っていたお酢も、摂り方によっては歯を溶かしてしまうことがあります。上手な摂り方さえ知っていれば、歯を溶かさずに済むのです。
良いとわかっても、できること・できないことがある
誰でも、よく歯磨きをして、甘い物を一切食べず、タバコも吸わずに規則正しい生活をすれば、歯にも身体にも良いことはわかっています。でも、わかっていてもなかなかできないことがあることも、わかっています。
だからといって、甘いものを食べるな、理想的なブラッシングをしろ、禁煙しろ、と言われてできるものでもありません。できること、できないことがあるのは当然であり、食べたいものを控えるのは別の苦痛を生むことにもなります。
現在の生活環境の中に歯周病やむし歯の原因があるなら、その生活環境のどこなら改善できるのかを考えます。急に改善するのは誰にとっても難しいことです。でも、どこまでならできるか、できる範囲のことは何か、まずはできることから実践します。そして、足りないところを私たち歯科医院がフォローします。
大切な歯を失わないために必要なこと、それは患者さまと歯科医院との二人三脚で行うお口のケアです。